線形代数学習メモ ベクトル空間の基底について

 幸か不幸か嵐の前の人生最後の静けさとなる 2 ~ 4 日間が訪れた。嵐はこれから幾度となく訪れるだろうが、静寂はこれが最後だろう。ほぼ読んでいない『アンナ・カレーニナ』を読もうか、プログラミング学習をしようか、1 ヵ月前に 24 点で不合格だった簿記の勉強をしようか迷っていた。プログラミング学習は嫌でもすることになるだろうし、簿記はこの静けさを費やすにはあまりにかけ離れている目標のような気がして勉強する気が起こらない。そのような選択肢の中、手に取ったのは松坂和夫の『線形代数入門』だった。

 読んで基底について勉強したことをメモしておく。ただし読んだ定義や定理を書くことは、ショーペンハウアーの言う「なにもかも二番煎じで、使い古された概念、古物商で買い集めたがらくたにすぎず、複製品をまた複製したかのように、どんよりと色あせている。」という結果に終わるのでやめておく。「直接的で根源的なものを取り扱うという特徴があり、自分の考えや表現をすべてみずから検証してゆく」ことはできないだろう。

 真に自分が目指すところも経路も見えないのだから、正解(この静けさを費やすに値する作業)を探り当てることはできない。コンパスがあっても目的地がわからないのだから北を指していても使い物にならない。だからといって立ち止まることは無駄な気がしてじっとしていられない。もしかしたら立ち止まって何もしないことが正解なのかもしれない。「何もしないをしているんだよ」というプーさんの言葉が金言に思えてきた。

 ベクトル空間の基底の元の個数が一定であることは、次の  x_1,\ \cdots,\ x_n に関する連立方程式 m < n のとき自明でない解を持つことから示される。自明でない解というのは 1 次従属と関係している。基底を 2 つ取ってきたとき、それぞれの基底がもう一方の基底の 1 次結合で表されることから連立方程式が現れ、基底の 1 次独立性から先ほどの不等式のような元の個数の比較ができ、一定であることが示される。

{\displaystyle 
\begin{eqnarray}
  \left\{
    \begin{array}{l}
      a_{11} x_1 + \cdots + a_{1n} x_n = 0 \\
      \cdots \\
      a_{m1} x_1 + \cdots + a_{mn} x_n = 0 \\
    \end{array}
  \right.
\end{eqnarray}
}

 やめておくと言いながら結局「なにもかも二番煎じで、使い古された概念、古物商で買い集めたがらくたにすぎず、複製品をまた複製したかのように、どんよりと色あせている。」という結果に終わった。終わらざるを得なかった。