2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

了解

体を包む温かさ、湯から立ち上る湯気、眼前に広がる空や山、湯を囲む岩々、木でできた柱や天井、庭に生える草や木立、一定のリズムで流れる湯の音。 体から大きな息が出ていき、落ち着きと平安が入ってくる。 自然がつくり出した巨大な場所に足が投げ出され…

弥彦

新品の靴に履き替えて弥彦神社に御礼参りに行った。妻も驚くほど、これ以上ない安産だったことをお伝えし、御礼を申し上げた。 鹿が描かれた御守りは、妻の着替えなどを詰めた鞄に結んであった。陣痛がきたことを病院に電話で伝え、しばらく自宅のアパートで…

金木

起床後、朝7時前に小堀旅館を後にした。弘前駅から川部駅に向かった。川部駅で降りた後、五所川原駅行きの電車の出発まで3時間近くあり、仕方なくタクシーで五所川原駅まで移動することにした。 五所川原駅に着き、「珈琲詩人」というカフェに入った。洋風で…

起床

朝6時少し前に起床し、シャワーを浴びた。着替えは持ってこなかったので、コインランドリーで洗濯した昨日と同じ服を着る。 やはり逃避だ。向き合うことが怖いから逃げているのだ。しかしすべてを終わらせることもできない。これも怖いから。シャワーを浴び…

贅沢

小堀旅館に荷物を置き、外に出る。霧雨が降っていた。まだ雪は降っていない。ダウンのフードを被り、居酒屋を探す。 城東閣という通りを抜け、かくみ小路に入る。そこで「まわりみち文庫」という本屋を見つけた。とても良い雰囲気の本屋だった。こじんまりと…

弘前

特急つがるを弘前駅で下車した。14時45分だった。五所川原駅まで行こうと思ったが、次の電車までかなり時間があり、それに乗って斜陽館に辿り着いても閉館後であることがわかった。そこで弘前に泊まることにし、翌日斜陽館を訪れることにした。 まだ昼の3時…

秋田

新潟駅を出発した特急いなほは秋田駅に到着した。駅のホーム向かい側には、すでに12時40分発の特急つがるが停車していた。これに乗って青森まで行くのだと思った。 切符は新潟-秋田間しか買っていなかったので、一度改札を出て弘前までの切符を買った。斜陽…

出発

ここ2、3日、太宰治記念館である斜陽館に行こうかと考えていた。決心がつかなかったのは子どもがいるからだ。子どもは妻の実家にいるし、妻も何かあれば頼るのは私ではなく両親だろう。私にとって義両親と会うこと、妻の実家で過ごすことは気が重いと妻には…

泥酔

ばかみたいに酔った。朝起きたら頭が痛い。体がだるい。 友人に謎のラインを送ってしまった。『若きウェルテルの悩み』がどうの、芥川龍之介の『歯車』がどうの、ヨルシカがどうの。すごく恥ずかしい内容だった。痛々しい。朝起きたら恥ずかしさがこみ上げて…

『女生徒』とヨルシカ

太宰治の『女生徒』を読んだ。読みながらヨルシカを連想した。 ヨルシカの『斜陽』は太宰治の『斜陽』のオマージュだが、もしかしたら『女生徒』にも影響を受けているかもしれない。 私は、恋をしているのかも知れない。 太宰治『女生徒』 僕は恋をしたんだ…

不毛2

全身の力を振り絞り、妻の実家に行ってきた。 家に入ると妻は泣いていた。事故にあったのではないか、アパートで首を吊っているのではないかと心配していた。そんなわけない、大丈夫だよと返した。 子どもを車に乗せ、3人で日用品を買い、家に戻った。義母が…

不毛

妻の実家に行きたくない。今日は約束していたのに。生後1か月の子どもがいるのに。妻にラインも返していない。義両親に会いたくない。非常に無駄なやり取りが多いからだ。 まず挨拶。無駄。いや、これは無駄じゃないか。むしろ必要だ。必須である。自分がま…

社会

最終出社を終え、有給消化に入った。妻と生後1か月の子どもがいるが、逃げるように妻の実家を後にした身としては、彼らに会わせる顔が無い。義務感はあったが、ただただ鬱陶しいばかりで向き合う気力も起きなかった。 社会の義務や常識に従うことが馬鹿らし…

退職

今日は最終出社日だった。朝、早く起きた。珍しく早く起きた。 シャワーを浴び、朝食を食べ、少し早いが家を出た。 コインパーキングに車を停めた。霧雨が降っていた。傘をさしながら、まだ開いていない会社の横を通り過ぎ、駅に向かった。駅の中にある喫茶…

『父』を読んだ

太宰治の『父』を読んだ。気持ちが軽くなる作品だった。晴れ晴れとした気持ちになり、やる気が湧いてくる。 芥川龍之介とはまた違った良さがある。芥川龍之介は知的で自分に厳しい印象を受ける。上品で物静かであり、しかし気取っている感じを受けない。 太…

限界

朝起きると、彼は家を飛び出した。逃げるように妻の実家を飛び出した。 彼にはもはや限界だった。非常に居心地が悪くなった。そして、ついに逃げるように妻の実家を飛び出したのだった。 彼は平日は仕事をし、休日は生まれて間もない子のために妻の実家に通…

感動

一体、感動はどこへ行ってしまったのか。 彼と彼の妻は旅行中だった。彼は必死で歩き回って探した。妻がついていくことができない速さで歩いた。何かにとりつかれたように無我夢中だった。彼の妻は、気遣わない彼に怒りをぶつけた。 彼は弁解の余地もなく、…

静寂

彼は何をするのでもなく、一人ぽつんと自宅の部屋にいた。部屋は静かだった。世間と隔絶された空間が心地よかった。妻子を除いて誰と関わるのも億劫だった。 全身に力が入らなかった。もはや世間に立ち向かうだけの力は残されていないように感じられた。 し…

最近読んだ本

読んだ本について1冊ずつ感想を書くのがめんどうになった。 最近は芥川龍之介の『或阿呆の一生』、『歯車』、『河童』を読んだ。どれも素晴らしい。言葉が静か。やかましくない。胸の底深くに届く。とても大切な言葉だと感じる。 最近の本は読めそうもない。

苦労

彼は苦労という言葉を発したことを後悔した。あたかも環境のほうが不幸であったことを思わせるからだ。 彼が経験したのはただの自業自得であった。 彼は何の苦労もしていない。苦労したのは、彼の自業自得によってボロボロになった、彼を愛した人々のほうで…

幸福

彼と彼の妻の間に子が生まれた。妻と子は実家に帰省した。妻は実家の両親と生まれた子に囲まれ幸せな日々を送った。子は母の愛情を一心に受けすくすく育った。 彼はその間一人で暮らした。とても静かだった。読みたい本を読んだ。仕事もあったがそれ以外は本…

『秋』を読んだ

芥川龍之介の『秋』を読んだ。信子はずっと後悔するのだろうか。大阪で今の夫と暮らしていけるのだろうか。 久しぶりに会った信子と俊吉の会話。信子が辛い。 「どうです、大阪の御生活は?」「俊さんこそ如何?幸福?」 芥川龍之介『秋』 芥川龍之介全集 Ki…

『山羊の歌』の「月」を読んだ

中原中也の詩集を読んでいる。やっぱりわからない。たぶん詩がわからない。「詩」とはなんだろう。意味がわからなくて全然読み進めることができない。 「月」を読んだ。読んだとは言えない、目で文字を追っただけ。 なぜ月はかなしいのだろう。養父の疑惑と…

『山羊の歌』の「春の日の夕暮」を読んだ

中原中也の詩集を読み始めた。わからない。知らない言葉がたくさん出てくる。ただ文字を目で追っているだけ。 「春の日の夕暮」を読んだ。 真っ赤な夕日が家々に沈んでいく様子が目に浮かぶ。次になぜ「穏やか」と来るのか。アンダースローのように地面すれ…

『星の王子さま』を読んだ

サン・テクジュペリの『星の王子さま』を読んだ。涙が出てきた。本当に心に響いた。とても切ない。しかし前を向くことができる。これがあれば生きていける。かなしいとき、つらいとき、さみしいとき、きっと助けになってくれるだろう。