弥彦

 新品の靴に履き替えて弥彦神社に御礼参りに行った。妻も驚くほど、これ以上ない安産だったことをお伝えし、御礼を申し上げた。

 

 鹿が描かれた御守りは、妻の着替えなどを詰めた鞄に結んであった。陣痛がきたことを病院に電話で伝え、しばらく自宅のアパートで痛みに耐え、それから病院に向かった。妻の鞄を病室に運んだ。クローゼットに鞄を置いてから扉を閉めるとき、御守りを手に取り、安産を願った。

 

 弥彦神社への御礼が遅くなってしまった。非常に罪なことをしてしまった。白山神社、神明宮への御礼参りは生まれてから一週間後くらいに行った。弥彦神社は一ヵ月も経った後だった。

 

 遠くから眺めているとわからないが、麓近くを通ったとき、弥彦山は陸側に広がる平野を見守っているのだと感じた。とても堂々としている。弥彦神社の境内に十柱神社という茅葺屋根に苔の生えた小さな神社を見つけた。小さいながらも神様が住んでいるような気配があった。

 

 足が痛くなり、靴のサイズが小さかったことに気がついた。帰りにサイズの大きい同じ靴を買って帰った。弥彦神社を歩いた靴は、履いたその日に下駄箱に仕舞われた。