『老人と海』を読んだ

 ヘミングウェイの『老人と海』を 2 回読んだ。最近 2 回読むとよく理解できることに気づいた。1 回読んだだけではどんな話だったか覚えていない。

 老人は巨大なカジキに引っ張れて陸地から遠ざかり、そのまま漂流してしまうのではないかと心配になった。

 振り向けばもう陸地は影も形もない。だからどうだ、とい彼は思った。いつだってハバナの方角はぼんやり明るくなってくれる。

ヘミングウェイ老人と海』 訳者:小川高義 光文社 発売日:2014/9/20 Kindle

 老人はいつでも前向きに考える。老人は決断した後にこれでよかったのかとか、決断後の思わぬ孤独を感じて迷う。しかし迷いや不安が生じる度に前向きに考え、現実に立ち向かうために目の前の現状や境遇を受け入れるよう自分に言い聞かせる。

おれは追いかけることにした。どんな人間よりも、世界の誰よりも遠くへ行って、やつを追う。そしていまこうしてつながっている。正午からずっとこのままだ。どっちにも、どこからも、助けはこない。

 こんな稼業にならなければよかったか。しかし、漁師に生まれついたのだから仕方ない。

ヘミングウェイ老人と海』 訳者:小川高義 光文社 発売日:2014/9/20 Kindle

 カジキとの戦いは勇敢で痛ましかった。

 これまでの痛み、わずかに残った力、なくして久しい誇りを全部まとめて、魚の苦しみにぶつけると、ついに魚は横倒しになって、ゆらりと寄ってきた。

ヘミングウェイ老人と海』 訳者:小川高義 光文社 発売日:2014/9/20 Kindle

 カジキとの戦いで、老人はぼろぼろになった。港に戻ると他の漁師が老人を褒め称える姿や少年とともに喜びを分かち合う姿が目に浮かんだ。

 しかしそう上手くはいかず、絶望が老人を襲う。カジキの血の匂いを嗅ぎつけて、サメに追われることになる。老人は何度もサメを撃退するが、あれだけ苦労してとったカジキは頭以外食べられてしまう。失ったものは大きかったが、老人は初めからカジキなんていなかったと考えた。

まあ、負けてしまえば気楽なものだ。こんなに気楽だとは思わなかった。さて、何に負けたのか。

「何でもない」と声に出した。「沖へ出すぎたんだ」

ヘミングウェイ老人と海』 訳者:小川高義 光文社 発売日:2014/9/20 Kindle

 港の漁師は優しかった。老人の頭と骨だけになったカジキを見て驚いて残念がった。老人を慕う少年も優しかった。

「また二人で漁に出られるよね」

「いや、おれには運がない。もう見放されたよ」

「そんなのどうでもいい」少年は言った。「僕の運を持っていく」

「おまえの家で何て言うかな」

「平気だよ。きのうは二匹つかまえたけど、やっぱり一緒に行きたい。まだまだ教わることはあるんだ」

・・・(中略)・・・

「早くよくなってくれないと困るよ。まだまだ教わることはあって、何でも教えてほしいんだからね。どのくらい大変だった?」

「すごかったぜ」

ヘミングウェイ老人と海』 訳者:小川高義 光文社 発売日:2014/9/20 Kindle