退職

 今日は最終出社日だった。朝、早く起きた。珍しく早く起きた。

 

 シャワーを浴び、朝食を食べ、少し早いが家を出た。

 

 コインパーキングに車を停めた。霧雨が降っていた。傘をさしながら、まだ開いていない会社の横を通り過ぎ、駅に向かった。駅の中にある喫茶店に入った。

 

 コーヒーを頼んだ。レジに並んでいるとき、懐かしい思いがした。

 

 コーヒーはいい香りだった。熱くて飲めなかったので小説を読み始めた。それは妻から夫に宛てた手紙だった。妻が夫に別れを告げる手紙だった。いつの間にかコーヒーは冷めていた。

 

 会社に到着し、夜になり、仕事を終えた。帰りは雨がひどくなっていた。