『秋』を読んだ

 芥川龍之介の『秋』を読んだ。信子はずっと後悔するのだろうか。大阪で今の夫と暮らしていけるのだろうか。

 久しぶりに会った信子と俊吉の会話。信子が辛い。

「どうです、大阪の御生活は?」「俊さんこそ如何?幸福?」

芥川龍之介『秋』 芥川龍之介全集 Kindle版 ASIN:B00PR3ARBM

 信子がかわいそうになる信子と照子の会話。

それからすぐに又「御姉様だつて幸福の癖に。」と、甘えるやうに付け加へた。その言葉がぴしりと信子を打つた。

 彼女は心もちまぶたを上げて、「さう思って?」と問ひ返した。問ひ返してすぐに後悔した。

 最後の描写も切ない。読み終わった後、切ない気持ちが湧き上がってくる作品だった。

 

 こういう淡々とした書き方、心情の微かな変化の表現、それに付け加えられる風景の描写が好きだ。もしかしたら雪国もそうだったのかもしれないと思った。急いで読んだから見逃したのかもしれない。しかしあの作品は島村の言動が好きになれず、秋を読んだ後のこんな気持ちにはならないと思った。